千葉市地域無形文化財「御浜下り」は、千葉氏と千葉の民衆のお祭りを起源とする、海浜都市・千葉の祝祭です。
千葉の御浜下りの起源は古く、 治承4年(1180年)に結城浜の合戦で平家の軍勢を撃退した後に、千葉常胤が創始したものと伝わります。古くより千葉市中央区の海側には町人や漁民が住居を構える「結城」と呼ばれる湿地帯が広がっており、現在の千葉市中央区神明町・出洲港付近には結城浜という遠浅の砂浜がありました。この地を舞台とした結城浜の合戦では、千葉常胤の留守居を狙って侵入した平家の軍勢に対して少数劣勢の千葉方が立ち向かい、結城の船頭など町人たちも千葉勢を大いに助けたと歴史書に記されています。
千葉氏はこの戦で敵の大将を生け捕りにする戦果を挙げ、源頼朝からの厚い信頼を得て名族の地位を確立。市内各所の神社仏閣に篤く報賽を重ねたと伝わります。本宗家の子孫一族は現在の千葉市を中心として下総国の各地に所領を獲得し、千葉県北部の広い地域をおよそ470年にわたって統治しました。
御浜下りの最大の特徴は、担ぎ手が3度にわたって全員で海に入り神輿を揉む「海中神事」にあります。この祭礼は、古くは千葉神社の祭礼の一環として行われてきたものですが、その光景は今なお大変勇壮なものです。戦後は寒川神社(中央区寒川町)がこれを引継ぎ、寒川神社例大祭の中心的行事として「御浜下り」を例年奉仕しております。
平安時代後期にはじまった御浜下りは、その後、天災や飢饉、戦乱や空襲などによって幾度も断絶の危機にさらされながらも、今日まで千葉の民衆の手によって大切に継承されてきました。
御浜下り神事は、戦後の出洲港埋め立てによる36年間の断絶を経て平成12年に復活。以来千葉港のポートパークを御浜下りの場所として、旧寒川11町会や協賛企業をはじめとする地域の人々の全面的かつ献身的な協力のもと、毎年8月20日に斎行されております。